砥部焼専門店/砥部焼の浜陶 Blog
2018/10/07 14:01
■砥部焼/梅山窯

1. 梅山窯の概要
創業: 1882年(明治15年)
開窯者: 梅野政五郎
コンセプト:「用と美」
飾って眺めるための器ではなく、毎日の暮らしの中で使われるための「実用的な美しさ」を追求しています。
2. 特徴/なぜ愛され続けるのか
梅山窯の器には、ひと目でそれと分かる独特の温かみと機能性があります。
◎「ぽってり」とした厚みと丈夫さ
梅山窯の最大の魅力は、その厚みです。通常の磁器よりも厚手に作られており、「夫婦喧嘩で投げても割れない」という逸話(通称:喧嘩器)があるほど丈夫です。
◎玉縁(たまぶち): お皿や茶碗の縁を丸く厚く仕上げる技法により、口当たりが柔らかく、かつ欠けにくくなっています。保温性が高く、料理が冷めにくいのも特徴です。
◎ 付け立ての一筆書き
下書きの線を描かずに、筆の勢いだけで一気に文様を描く技法です。迷いのない筆致が生み出す「勢い」と、手描きならではの「ゆらぎ」が、器に生命力を与えています。同じ柄でも、職人の手によって一つひとつ微妙に表情が異なります。
◎白磁と呉須のコントラスト
砥部焼特有の少し灰色がかった温かみのある白磁に、呉須(ごす)と呼ばれる藍色の顔料で絵付けをします。このシンプルで力強い配色は、和食だけでなく、洋食や北欧インテリアとも相性が抜群です。
3、 歴史/民藝運動との出会い
梅山窯の歴史は、単なる伝統の継承だけでなく「革新」の歴史でもあります。特に重要なのが昭和中期に起きた民藝運動との関わりです。
明治時代: 当初は海外輸出用の磁器を生産していました。
昭和28年(1953年): 大きな転機が訪れます。民藝運動の父である柳宗悦(やなぎ むねよし)や、世界的陶芸家のバーナード・リーチ、濱田庄司らが砥部を訪問しました。彼らは梅山窯に対し、「手仕事の良さを生かした、実用的な器作り」を助言しました。
これにより、機械化や薄手の磁器とは一線を画す、「厚手で手描きの自然紋様」という現在の梅山窯(そして砥部焼全体)のスタイルが確立されました。
4、 代表的な絵柄(文様)
梅山窯には、自然をモチーフにした長く愛される「定番の柄」があります。
◎絵柄の特徴
・唐草
最も代表的な柄。四方八方に伸びるツルが「長寿・繁栄」を象徴する縁起の良い文様。筆の勢いが最も感じられます。
・太陽
抽象化された太陽を力強い藍や朱で描いた文様。モダンで元気が出るデザインとして人気です。
・なずな
素朴なぺんぺん草(なずな)をモチーフにした、可憐で優しい文様。
・十草
縦に縞模様が入ったシンプルなデザイン。スタイリッシュで料理を選びません。

■梅山窯は、「砥部焼の歴史そのもの」と言っても過言ではない存在です。
民藝運動の精神を受け継ぎ、「丈夫で、使いやすく、飽きがこない」という器の原点を守り続けています。電子レンジや食洗機に対応しているものも多く、現代の忙しい生活にも寄り添ってくれる点が、今なお多くのファンを持つ理由です。
「最初に砥部焼を買うならどれがいい?」と聞かれたら、まずは梅山窯の唐草模様の器を手に取ってみることをお勧めします。

