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砥部焼専門店/砥部焼の浜陶 Blog

2025/12/11 13:00

砥部焼 中田窯 ― 手仕事の深さと、暮らしに溶け込む静かな美

砥部焼の産地・愛媛県砥部町の豊かな自然に囲まれた地に工房を構える中田窯は、手仕事の温かさを大切にしながら、現代の暮らしにそっと寄り添う器づくりを続ける窯元です。華美な装飾や奇をてらった造形ではなく、毎日の食卓で自然に使い続けられる丈夫さ、美しさ、そして穏やかな存在感。それらを丁寧に積み重ねて生まれ器は、多くのファンから長年にわたり愛されています。


中田窯の作品を手に取ると、まず感じられるのは「手仕事ゆえの柔らかさ」です。砥部焼らしい厚みのある素や、丸みを帯びたフォルム、そして手にしっとりと馴染む重さと質感。ろくろ成形から絵付け、釉掛け、焼成まで一つ一つの工程を丁寧に行うことで生まれる器は、機械生産とは異なる“静かな温度”を宿しています。日々の生活の中で繰り返し使われることを前提に、丈夫さを保ちながらも、どこかやさしい表情をまとっていることが、中田窯の器の大きな魅力です。

絵付けでは、砥部焼の伝統色である呉須(ごす)の藍色を生かしながら、余白の美を大切にした図案が多く描かれています。伸びやかな唐草模様、草花や実を連想させる文様、あるいは心地よいリズムを生む抽象的なライン。それらはどれも手描きならではの揺らぎや間が感じられ、器に表情を与えています。中田窯の絵付けには、描き込みすぎず、余白の呼吸を大切にする独自の美意識があり、その控えめな佇まいは使い手の暮らしに自然と寄り添い、料理を引き立てる名脇役となります。


また、中田窯の器づくりは、「暮らしの中にある器」を常に意識している点にも特徴があります。たとえば、毎日使う飯碗は手に収まりやすいよう微妙な丸みや高さを調整し、湯呑みは握ったときの指の位置まで想像して厚みを整える。皿は重ねたときの安定感や食卓での扱いやすさを重視し、鉢は盛り付けの余白が自然と生まれるように縁に表情を持たせる。実用としての使い心地と、視覚的な美しさを両立させるための工夫が、細部にまで息づいています。

中田窯では、長く愛され続けてきた定番の器に加え、現代の住まいや食文化に合わせた新しい形づくりにも積極的に取り組んでいます。和食だけでなく洋食やエスニック料理にも合わせやすいシンプルな皿、用途を限定しないフラットなプレート、スイーツにも似合う小鉢など、食卓の多様化を踏まえた器がそろっています。どの作品にも共通しているのは、「気負わず毎日使えること」「使う人の生活を豊かにすること」という芯の通った考え方。奇抜さではなく、使い続けるほどに良さが染み出してくる、そんな器づくりを大切にしています。


さらに、中田窯では釉薬にもこだわりがあります。透明感のあるやわらかな白磁、温度や土の状態によって微妙に変化する表情、光の下でほのかに青みを帯びる肌など、手仕事ならではの個性を生み出す要素として釉薬を位置づけています。同じ形、同じ絵付けであっても、釉薬の溶け具合や窯の中の位置によって表情が変わるため、“世界にひとつ”の個性が感じられるのも中田窯の魅力の一つです。


こうした丁寧な器づくりの背景には、砥部の土地に根ざした職人の姿勢があります。砥部は古くから良質な陶石に恵まれ、白磁の器の産地として発展してきました。その伝統を踏まえつつ、中田窯は「日常の中の美」「素朴さと洗練の調和」を大切にしながら、現代の暮らしに寄り添う器をつくり続けています。手にするほどに味わいが増し、使い続けるほどに愛着が深まる器。それこそが中田窯の目指す“暮らしの中の相棒”としての器なのです。


暮らしに穏やかな彩りを添え、どんな食卓にも自然と馴染む砥部焼・中田窯の器。贈り物としても、ご家庭用としても、長くお使いいただける確かな品質と美しさを備えています。どうぞ手に取って、手仕事の温度と、静かな美しさを感じてみてください。