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砥部焼専門店/砥部焼の浜陶 Blog

2025/12/19 12:40

暮らしに寄り添う「用の美」:砥部焼の日常使いガイド


愛媛県砥部町で受け継がれてきた伝統工芸品、砥部焼。その最大の魅力は、鑑賞するための器ではなく、日々の暮らしの中で使われることを前提とした「用の美」にあります。白磁の肌に藍色の顔料「呉須」で描かれたのびやかな文様、そして、ぽってりとした厚みのある温かいフォルム。これらはすべて、実用性を追求した結果生まれたデザインです。

かつては夫婦喧嘩で投げつけても割れない「喧嘩器」などという、少し物騒ながらもその頑丈さを物語る別名があったほど、砥部焼は丈夫な器です。だからこそ、特別な日のためだけにしまっておくのではなく、毎日の食卓で気負わずに使うことこそが、砥部焼を最も輝かせる使い方と言えるでしょう。

ここでは、そんな砥部焼を現代のライフスタイルに合わせて日常で楽しみ尽くすための活用術と、長く愛用するためのポイントをご紹介します。


砥部焼の特性を知る:なぜ日常使いに向いているのか


砥部焼を手に取ると、まずその心地よい重量感と厚みに気づくでしょう。この「厚み」こそが、日常使いにおいて大きなメリットをもたらします。磁器特有の硬くなめらかな質感でありながら、陶器のような温かみを感じさせるこの厚みは、優れた保温性・保冷性を生み出します。熱い料理は冷めにくく、冷たい料理はひんやりとした状態を長く保ってくれるのです。

また、やや青みを帯びた美しい白磁のキャンバスに、呉須の深い藍色で描かれる唐草や太陽などの伝統的な文様は、力強くもありながら、どこか懐かしさを感じさせます。このシンプルで力強い色のコントラストは、盛り付ける料理を選びません。和食の繊細な色合いを引き立てるのはもちろん、彩り豊かな洋食や、スパイシーなエスニック料理など、どんな料理も大らかに受け止めてくれる懐の深さがあります。


シーン別・具体的な活用術


では、具体的にどのようなシーンで砥部焼を取り入れると良いのでしょうか。

1. 麺類・丼物の真骨頂
砥部焼と聞いて多くの人が思い浮かべるのが、うどん鉢やどんぶりかもしれません。厚みのある器は、熱々のうどんやラーメン、親子丼などをよそっても器の外側が熱くなりすぎず、しっかりと手で持つことができます。また、口縁(口をつける部分)の丸みを帯びた優しい口当たりは、汁物を飲む際の心地よさを格別なものにしてくれます。最後まで温かく美味しくいただける、まさに麺類のためにあるような器です。

2. 和洋を問わないメインディッシュ皿
7寸(約21cm)や8寸(約24cm)の大皿や、少し深さのあるカレー皿は、メインディッシュの盛り付けに最適です。カレーライスやパスタはもちろん、ハンバーグやロールキャベツといった洋食メニューも、砥部焼に盛り付けるとなぜか落ち着いた和モダンな雰囲気に仕上がります。白と藍の清潔感ある色彩が、野菜の緑やトマトの赤を鮮やかに引き立て、いつもの料理をワンランク上の見栄えにしてくれます。

3. 朝食のワンプレートで時短とおしゃれを両立
忙しい朝には、大きめの平皿や楕円皿を使ったワンプレートスタイルがおすすめです。トースト、目玉焼き、サラダを一枚の器に盛り付ければ、カフェのようなおしゃれな朝食が完成します。洗い物が少なく済むという実用的なメリットも見逃せません。頑丈な砥部焼なら、ナイフやフォークを使っても傷がつきにくく、安心して使えます。

4. 万能選手「そばちょこ」のマルチユース
砥部焼のアイテムの中で、特に汎用性が高く人気なのが「そばちょこ」です。本来の蕎麦つゆを入れる用途にとどまらず、その手頃なサイズ感と持ちやすい形は、アイデア次第で無限に活用できます。 食後のお茶やコーヒーを飲むカップとして、朝食のヨーグルトやフルーツを入れるデザートカップとして。あるいは、お浸しや和え物を盛り付ける小鉢として使えば、食卓の良いアクセントになります。耐熱性があるので、茶碗蒸しの器として使うのもおすすめです。いくつあっても困らない、まさに食卓の名脇役です。


現代の暮らしに寄り添う機能とお手入れ


伝統工芸品でありながら、砥部焼は現代の忙しいライフスタイルにも完璧にフィットします。その最大の理由が、家電への対応力です。

電子レンジ・食洗機OKの手軽さ
ほとんどの砥部焼(金彩や銀彩が施されていないもの)は、電子レンジでの使用が可能です。冷めてしまった料理を器ごと温め直すことができるのは、日常使いにおいて非常に便利です。また、食洗機に対応しているのも嬉しいポイント。高温のお湯と強い水流で洗ってもびくともしない頑丈さは、毎日の後片付けの負担を軽減してくれます。(※ただし、急激な温度変化には弱いため、オーブンや直火での使用は避けてください。)

目止め不要で、買ってすぐ使える
陶器の器を使い始める際に必要な「目止め(米のとぎ汁などで煮沸して、土の目を埋める作業)」が、磁器である砥部焼には必要ありません。吸水性がほとんどないため、汚れや匂いが染み込みにくく、カビの心配も少ないのが特徴です。買ってきたら食器用洗剤で洗うだけで、すぐに使い始めることができます。

簡単なお手入れで長く美しく
日々使っていく中で、茶渋などの汚れが気になってきた場合は、市販の台所用漂白剤を使用しても問題ありません。美しい白磁の輝きを取り戻すことができます。収納の際は、器同士を重ねても傷つきにくいですが、お気に入りの器をより大切に扱いたい場合は、間にキッチンペーパーなどを一枚挟むと安心です。


自分だけの砥部焼を育てる楽しみ


砥部焼には、梅山窯に代表されるような伝統的で重厚感のあるスタイルのほかに、近年では若い作家や女性作家による、薄手で軽く、カラフルな絵付けが施されたモダンなスタイルも増えています。

家族の食卓でガシガシ使える頼もしい一枚を選ぶもよし、ティータイムに彩りを添える軽やかなカップを選ぶもよし。自分のライフスタイルに合った砥部焼を選び、日々の暮らしの中で使い込んでいくことで、器はさらに味わいを増していきます。丈夫だからこそ長く付き合える砥部焼。ぜひ、あなたの日々のパートナーとして迎え入れ、「使う楽しみ」を存分に味わってください。